支持政党はどこですか
- Hajime Saito
- 2016年6月30日
- 読了時間: 7分
支持政党がどこか、ですって? もう、その質問からして我慢がならんのですよ。こういうのは、手品で言うところのフォーシング。つまり押しつけ。無限の選択肢の中から特定の答えのみを選ばせる方法なんですから。 いや、政党の数は有限ですし、さらには支持政党なし、という選択肢があるのだから、すべての選択肢を網羅しているはずだ、と。そう言いたいんでしょう。 では、私の意見はその選択肢に入りますかね。 私は、政党制そのものを否定する、という立場なんですけれど。 つまり、すべての政党の存在を許さない、という立場なんですよ。あなたの求める選択肢の「支持政党なし」ってやつは、明らかに、暗黙のうちに政党そのものを正当化してるでしょ。いや、ダジャレではなく。 ですから、私の答えは「支持政党なし」ではないのですよ。さらには「答えられない」でもなく「分からない」でもありません。 また、政党がどのような主張をしているかとか、そういうのも無意味です。政党が政党であることを許容している以上、あらゆる主張が無意味であると考えます。そもそも、政党が公約を裏切ったとかなんとか、そういうことからして無意味だと思ってます。いや、それどころか公約ってことを表明している時点で、そいつはバカであると断定していいだろうと思ってるくらいです。 だってですね、民主主義の根幹は多数決なんです。どんな主張であれ、多数決によってしか通らないという前提がまずあるわけです。なのに、「これこれこういうことをします」って、個人が先に言えるはずがないんです。せいぜい「これこれこういうことが大切だと考えます」ってことまででしょう。主張していいのは。 だいたい「やります」って、変な約束して、たとえそれが実現できたとしたって、そいつがやったことにはできない。多数決ってのはそういうシステムなんですよ。 いや、そういう約束を実現するために政党っていう仕組みがあるんです、とね。与党になれば、さまざまな主張が多数決原理で通せるようになる。そのための政党なんですよ、とね。 アホか。 そこが政党ってやつの最大の問題点なんですよ。 つまりそれは、こう言い換えることができます。 すなわち「なにを決めるかはこれから考えるとして、決めたからには必ず通すシステム」って。 もう、これだけで十分すぎるくらい危ないじゃないですか。選挙で選べるのはほんの時々、つまりその間だったらやりたい放題なのが基本なんです。っていうか、やりたい放題できるようになってるシステムだってことなんですよね。 さらに言うならば、政党ってのはただの数です。選挙に通ったからうんぬんって言いますけど、比例区なんて制度があるじゃないですか。あれは、政党の数を増やすだけの仕組みでしょう。正直なところ、あそこに議員ってのがいて公費を使うこと自体無意味です。いっそロボットでも置くといいんです。「ぼくは自民党の議員のペッパーです。自動的に自民党の議案に賛成するよ。正直なところロボットが議員ってどうですか?」とか言うてりゃいいんです。「あれれ?」とか言うてりゃいいんです。 つまり、政党ってのは、個人の意見を圧殺しやすくする仕組みなんです。 いやいや、そんなことはない、と。そういう意見ですかね。たとえば、新人議員ってのは状況が分かってないから教育する必要がある。その教育機構としての政党には意味があるはずだ、と。さらには立候補者を育てるための機構としても意味があるのだ、と。 ほーら。 政党にとって都合のいい議席を育てるためのシステムじゃないですか。 国にとって好ましい人材を育てる、ということが必要であることは少しは認めますけどね。そこを否定すると国家を否定することになって面倒だから。 いや、国家を認めないって方向性も否定はしませんよ。ただ、そっちはすごく面倒だから、当面は国っていう枠組みを利用してもいいと思ってるだけで。 いや、国じゃなくてもいいや。 社会、ってことにしましょうかね。人間は個人でできることがあまりに貧弱だから、なんらかの協調システムを構築運営する必要があるだろう、と。そのためには、それなりの視野の広さや能力を持った人材を育てる必要がある、とね。 でも、それを政党がやる、ってことになったら、どうしたって政党の議席数や、政党のシステムの維持が目的化されてしまうんです。 あらゆる組織は、その組織の存在意義を確保する形で運営されねばなりません。そうでない組織は自壊してしまうからです。国も政党も同じこと。国は仕方なく認めたけれど、政党の存続を認める必要はありません。ないくせに存続しようとしやがるわけです。 だいたいね、現状の選挙制度ってのは、ただただ「選挙に強い人」を選ぶためのシステムでしょう。「有能な人」だの「人格的にすぐれた人」だのを選べるようになってないんです。だから、どうでもいいやつが選び出される。いやそもそも、まともなやつなら選挙なんて出ない。まともじゃないやつの中からなんとなく選んでる。ろくでもないことになるのは当然。いや、ろくでもないことにしかならないんです。 支持政党、とか言ってる場合じゃないでしょ? それでも、現状にあきらめてるばっかりでもみっともないんですよね。困ったことに。 では、どうにかして政党を支持しなきゃならないとしたらどうするか。 とりあえずこういう意見の受け皿になる新党が必要ですね。現状のシステムを単純に否定しても切り替わりはしないんですから、なんらかの切り替えのクッションボードとして新党を作る、これならかろうじて支持できるでしょう。 ひとつは、まず、選挙制度を変える党。今の状況では国をうまく運営することができそうにないので、国をうまく運営してゆくための人材によって政府なり立法府なりを作るにはどうしたらいいか、研究して実行しようとする党。その成果を公にしてゆけば世論ってのを動かす可能性だってあるでしょう。 次に、是々非々党。ここは党議拘束ってのをしないで、議員がそれぞれ勝手に自分の主張をする。ただし党内のディスカッションはたっぷり行い、その過程と結論をすべてオープンにする。よその党の議案についてだって徹底的に検討して、結論として各議員がおのおのの責任において賛否を出す。そもそも未来のことを決めるのに絶対確実ってのはありませんから、正解が出てみんなでそこに乗るってこと自体がおかしいんです。ま、本当のところすべての議員がそうなってくれて、初めて多数決制度に意味が出てくるんだけど、ここが与党になるならそれでもいい、ってところ。 で、もうちょっとファンタジックなことも許されるんなら、AIを、人工知能を議員にまぎれこますための党、ってのはどうですかね。社会を運営するために作ったさまざまな人工知能を使って、「私はこの人工知能の指示通りに議案の賛否を決めます」っていう議員を擁する党。ただし、ひとつの人工知能に議員はひとり。いろんな人工知能を議会の場で競わせる形になる。しかもその議席は投票によって選ばれることになる。このシステムのいいところは、議席を持つ人工知能と同じシステムをネット上で運用できるってこと。つまり、投票するための基礎知識として、ネットを介して議員本人と同じ能力を(政治的には)有する相手と、思う存分議論ができるってこと。議員候補が人間だったら、どうあってもすべての相手と話し合うことなんてできっこないでしょうが、人工知能だったらどうにだってできるわけです。議員になるのは、その人工知能を育て上げた人間、ってことになる。さらに、人工知能同士の多数決がなされるってことも意味がある。 ま、そんなとこでしょうかね。 ともかく、あくまで政党システムは不支持ですが、その問題点を吸収できるような政党があるなら、かろうじて支持できる、かもしれない。 さてそこで、私の意に添うような政党はありますか? ありませんよね。 で、この答えでアンケートに入りますか? はい、入らない、っと。 こういう意見は勝手に無視するわけですよね。で、国民全員がこうこうである、と決めつける……。 おっと、これ以上は我が身の危険かな。 では失礼。
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ここまで書いてから「支持政党なし」っていう政党の存在に気づいた。議員が自らの意見を持たず、ネットで集めたアンケートによって行動するだけ、という党であるらしい。ここで主張してきたことに通じる考えを持っているらしいことはおぼろげながら察せられる。 ただ、細部のゆるさがあまりに多すぎる。実行力はあるが想像力と表現力が足りない気がするのだ。今の段階では、ただの目立ちたがりに見えてしまう。 応援、とまではいかないが少し見守ってみたい。
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