『小さなSF?鑑』のこと
- Hajime Saito
- 2018年9月20日
- 読了時間: 4分
もう数年前になってしまったが、高井信さんが葉書による同人誌『SFハガジン』というのを始めるので、よかったら参加しませんかとのお誘いをくださった。 ショートショートを書く、ということであるなら原則お引き受けすることにしている。 書いてください、ということではない。書いたら載せるよ、というだけの話である。が、やはり原則は変わらないのだ。ショートショートを書きたいのだ。 そこで、コンスタントに書かせていただくことにした。せっかくだからSFのショートショートを。でもって、なるべくいろんなパターンで書くことにしたのである。 やがて、ふと思いつく。 せっかくいろんなパターンで書くのだから、できるだけ網羅的にしてみてはどうか、と。SFのいろんなパターンを網羅して、いずれはまとめて、ちょっとしたSF事典になったら面白いだろう。 そこで項目を立てて、それぞれの項目に合わせるように執筆することにする。「方程式もの」とか「宇宙戦争もの」とか、書き下ろしていったのだ。(「SFハガジン」にも継続的に掲載され、その年のベスト短編セレクションの候補作になった作品もちらほら) そのうち項目立てがつらくなる。それでも、なんとか四十項目まででっちあげた。それぞれに作品を当てはめながら執筆をして、どうにか書き上げることもできたのだ。 が、これで終わりというわけにはゆかない。せっかくだから項目ごとに短い説明を加えよう、という色気を出してしまう。ここでけっこう難航。 でもまあ、今年の猛暑の中、コンビニでフラップなど喰いながらなんとか完成させたのだ。 ショートショート四十本に、それぞれの類型について書いた能書きがついたのをまとめた原稿。 しかしながら、完成させてみると、どことなく気持ちのよくないものになった。つまり、好きな人なら好きだろうけれど、興味のない人に読んでもらおうとすることに意味がないだろう、という気分なのだ。 いっそこれで終わりにするか、というところなのだけれど、最近はごく安価に印刷製本してくれるところがあるので本の形にすることにした。まあ、高井さんにはお送りするのがスジだから、一冊よりたくさん作ろうと考える。なら、少しは欲しい人もいるだろうか、と考えてフェイスブックとツイッターで欲しい人がいるかと告知。諸般の事情により八部つくることにして適宜ばらまいたのだ。事典というほどではない。さりとて図鑑でもない。字しかないからだ。なら、『小さなSF字鑑』にしよう、と適当に表紙もでっち上げて発注。欲しいという人に送付した。 さあ、これで終わりでいいや、と思う。 ただ、もう少しくらいは欲しい人もいそうなのだ。といって、販売はしたくない。面倒だし、お金を払った読者はいろんな意味で勝手なことをする、していいとされているのが読者だから。 と、そうこうするうちに、やたらに安い印刷屋さんを見つけてしまう。かつて同人誌を作っていた頃にはオフセット印刷でそこそこ高価だったので、「あれ? これくらいなら只でばらまいても悔しくないんじゃないか」などと思ってしまうくらいに安いのだ。 そこで、一気に百冊、作ることにしてしまったのであった。 これくらいなら、欲しい人に配ってゆけば困るほどのことはあるまい。お金はぼちぼちかかかる。が、たいしたことはない。なんなら、遠い昔、星新一ショートショートコンテストでもらった賞金を使ってもいい(苦笑)。あれから三十五年、初単行本から三十年、ついでに言えば結婚二十五周年でも銀婚式をする気もない。なにかにつけ記念っぽい年だから、かまわんだろう。 と、そんな感じで本を作ってしまったのである。 たくさんあるので、少しは減らしたいのである。 そこで、読みたいという人には、差し上げようと思う。ただし、こちらから「読んでください」ということはしたくない。もう、そういうお願いのたぐいは、できる限りしたくないのだ。 そんなわけで、この本『小さなSF?鑑』(字鑑から変更)を、「是非読みたい」という人にお送りします。送料も実費もいただきません。返礼とかお祝いとか、そういうのもお断りします。ただ、面白かったら、なにかしら発信して、私がエゴサーチした時に目に入るようにしていただくと、ちょっとは報われることでしょう。 このブログを収めた私のサイトの「お問い合わせ」機能を使って、読みたい、という旨のメッセージ、および送付先を送ってください。送付先は、自宅でなくても実名でなくても、郵便で届くならOKです。 だいたい先着三十名って感じになろうかと思われます。場合によってはもうちょっと増やすかも。 条件は必ず読むこと。読み始めて「趣味が合わない」という場合は私のところまで送り返してください。他の人に回すかもしれません。 あるいは「是非読みたい」という別の人に譲渡してもかまいません。ただし、転売は不可とします。ナンバリングして、誰にその番号を送ったのかは記録しておくことにします。別に罪に問うことはありませんが、「ああ、そういう人なのね」と思うことにします。 さてと……。 できれば楽しく読んでいただける人に出会ってくれますように。
最新記事
すべて表示『魔法物語』シリーズは、いつの間にか私のライフワークとも言うべき作品に育ってしまった。 これをオンデマンドで出版しようと考え、であるならばと手を入れて、と作業していたわけだ。が、その形態自体に不満があって、いまではやめてしまっている。 が、それでも書き続けてはいるのだ。...